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アリスペットクリニック

780-8061 高知市朝倉甲137-10
TEL 088-840-7741
診療時間 : 09:00〜12:00
15:00〜18:00
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今はなき土電会館には2つの映画館(テアトル土電、土電ホール)があり、34年前全世界を恐怖に落とし入れた問題作「エクソシスト(悪魔払い師、祈祷師)」という映画が封切られました。

○月×日 第一診察室

とても仲睦まじい老夫婦の大切な一人息子、シーズー犬のポチちゃんの診察。
いつもは温厚で落ち着いたお二人ですが、今日は何か切羽詰った様子です。

おばあさん 「先生!うちのポチが変ながですき!」

おじいさん 「脳がやられたろうか!へんしも見ちゃってや!(急いで見てください。)」

獣医師 「いつからどんな具合ですか?」

おばあさん 「2〜3日前からよね。落ち着きがのうて、寝えちゅうと思うちょったら、急に走り出してあっちへパッタン、こっちへパッタン。フードは食べるけんど、夕べはとうとう自分の尾っぽに噛み付いて、ギャンギャンひせりよりました。(泣き叫ぶ)」

おじいさん 「尾っぽに何かあるろうかと思うて触りよったら、いっつも大人しいに、わしの手に噛み付いて来てのう。わしゃあ、たいちゃ(たいへん)怒ったがやけんど、やめんがよ。もう心配で、心配で!!」

おばあさん 「なんちゃあ (何にも)思い当たる節はないけんど、何んかが・・・・・何んかが・・・・」と言いよどみますが、意を決したようで眉間に縦じわをつくり「キッ!」と眼を見開き「先生!何んか悪いもんが取り憑いたがやないろうか!お払いをしてもらおうかと、おじいさんと話しゆがです。」「絶対何かが取り憑いちゅう!!!」

おじいさん 「わしらあ、宗教もしゆうけんど、まあいっぺん、先生に診てもろうてからにしいや、と言うて連れて来たがよ。」

突然の老夫婦の告白?により、私は動物の健康を守る獣医師とおよそ縁のない悪魔払い師というとても難しい立場になってしまった。それでなくてもホラー映画や怪談は苦手なのに(当時高校生だった私は、あのリンダブレアの首が1回転し緑色の吐物を噴き出した時には不覚にも気を失ってしまった。)と思いながら、ポチを視診・・・・・・。今まで大人しかったのに突然立ち上り、眼を剥き出し、ものすごい形相で自分の尾の付け根を噛んでは、ギャンギャン!くるくる回ってはギャンギャン!とうとう足を踏み外し診察台から落ちそうに・・・・。

おじいさん 「ほら!始まった!!へんしもどうにかして先生!! 先生!!!」

おばあさん 「アアアア・・・おじいさん!やっぱり取り憑かれちゅう!!お払いや!!!お払いや!!!」 

二人はもうパニック状態。待合室の患者さんもただならぬ様子におびえて、膝の上の愛犬をギュッと抱きしめ診察室をうかがっています。しかし、どのような状況下でも冷静に敏速に正確な判断が要求される悪魔払い師、いや!訂正!獣医師 久保田博之は悪魔の正体はお見通しである。

獣医師 「落ち着いて!落ち着いて!悪魔の正体がわかりました。大丈夫ですから。」
悪魔の正体は、ノミです。

おばあさん 「いいえ〜!今までノミらあ見たこともないし、この子は、ずうっと私らあと一緒におるし、シャンプーもしょっちゅう (いつも)しよります。」

毛を掻き分けながら、「ノミ、いますよ。いっぱい」背中から腰にかけ、まるでF-1レーシングカーのような高速で毛間を巧みに疾走している。

老夫婦 「エッ!どこに?」

獣医師 「ホラ!これ!これが悪魔!」

老夫婦 「エッ!どこ?」

獣医師 「ここにも! ホラ!ここにも!」

おばあさん 「おじいさん!見えるかね? 私しゃあ、なんちゃあ見えん。」

おじいさん 「・・・・・・・・・」 絶句 (見えないらしい・・・)
易者が使うような大きな虫眼鏡を上下させ焦点が合った老夫婦は、悪魔の存在を確認しやっと落ち着きを取り戻した。

おじいさん 「ほにや!えらいおるもんですのう!」

おばあさん 「えらい、お騒がせしました。すみません。私しゃあ、恥ずかしいちや!」

獣医師 「随分驚かれたでしょう。これは、ノミによるアレルギーです。ノミを退治し、噛んで、なめて作ってしまった皮膚炎の治療をすれば治ります。大丈夫です。」「ノミは人間にも食いつきますが、足など食われてませんか?」

おばあさん 「いいえ〜、私らあ、ひとっつも。そういやあ、この頃、蚊にも刺されんようになったし・・・・。年をとると虫も寄り付かんがかねえ〜。けんど、おじいさんは若い頃も男前で、たいちゃ、虫がつきよりましたがねえ〜。ハハハハハ・・・。」

胸のつかえが取れたのか、おばあさんのおしゃべりは続く。
「私しゃあ、その虫を追い払うに苦労したもんよ!ハハハハハ・・・・・。」
おじいさんも昔を思い出したのか、照れくさそうに「へへへへ・・・。勘弁△○#$%&・・・」

獣医師 「それでは、
悪魔払いの聖水(*)を掛けます。」「悪魔よ去れ! 立ち去るのじゃ!」

(*) 聖水 : フロントラインというノミ・ダニ駆除剤。首に数滴つけるだけでノミ・ダニはイチコロ、副作用なし。

一週間後、この老夫婦から電話があった。

「先生!あれから急にノミもおらんなって、皮膚も綺麗になりました。これからは、色々悩まんずつ、先生の所でお払いを・・・いや!診察に行きます。有難う御座いました。」

「もしもしーっ!おじいさん。私は悪魔払い師ではありませんからねー!獣医師ですよぉー!
聖水と言ったのは昔の映画を思い出したからなんです。わかってくださーい!」

皆さんもノミ対策(フロントライン)は万全にしましょうね。

ところでポチも、聖水を掛けた私のことを悪魔払い師と信じているに違いない!
今度逢ったら誤解を解かねば・・きちっとした獣医師だと理解してもらわねば・・絶対、絶対。

・・・翌日・・・

看護士 「先生!第二診察室に様子が変という犬を連れてきています。」

獣医師 「わかりました。西山看護士、すぐに聖水の準備をしてください!? アレ?」

「エクソシスト」

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